第6回、独りぼっち-3
別の場所ではチェロを弾いている 外国人がいた。
その周りに数人の人だかり。皆それぞれに聞き入っている。
俺はそこから少し離れた場所で壁に寄りかかりながら、目の前通り過ぎる人を眺めていた。
何もしないまま3時間がたとうとしている。
しばらくしたら、「オニィサン、オニィサンナニシテル?ダレカマッテル?」
と片言の日本語で話しかけられた。
ショートヘアーで目がぱっちりしていて、目尻の少し下にホクロがある。
歳は30代半ばから40代前半といった感じだろう。
「いや、誰も待ってないよ」俺は答えた。
「オニィサン、ナニシタイ?イッショニノミニイクカ?」
「ソレトモマッサージスルカ?」
どうやら、彼女はマッサージの客引きのようだ。
少しでも逆ナンだと思った自分が恥ずかしい。
「いや、お金もないからやめておくよ。」
「オカネイクラアル?」
「ぜんぜん無いよ、またね」
そう言うと彼女も離れていった。
俺も移動することにした。