第8回、君がいた夏-10
今度は駅の東口に行った。
もう花火が終わってからだいぶ時間がたっている。
人もまばらになった。
浴衣を着た20歳前後の女の子2人。
二人とも大きなぬいぐるみを両手で抱えていた。ゲームセンターにでも寄って来たんだろうか?
俺とカミヤが声をかける。アラシは後からついて来る。
「こんばんわ、大きいぬいぐるみだね。どうしたの?ゲーセン?これからどこ行くの?」
彼女たちは、「うん」「いや」「べつに」と言った素っ気ない反応。
そのまま一緒に駅に向かって歩いて行った。
すると突然彼女たちが大きな声で言った。
「ねぇー、助けてー。ナンパされて絡まれてるのー。」
待ち合わせをしていたのであろう。男が3人、女が1人椅子に座っていた。
あちゃー。ヤバいなコレ。内心トラブルの予感がして、俺たちは急遽回れ右をして何事もなかったように歩く。
「アハハハ、お前なんかナンパされる訳ねぇだろ」
背後からそんな声が聞こえてきた。
門を曲がり、しばらく歩いた。
「ショボそうなヤツらだったから大丈夫そうですよ」
カミヤが言った。
「何なんだよ!!あいつら、待ち合わせしてるならそう言えよ」
アラシもご立腹だ。
「本当だよ。わざわざ近くまで連れて行きやがって、性格悪いなぁ」