第8回、君がいた夏-14
「今日何回か声かけて、一番手応え感じたのどれ?」
俺は聞いてみた。
「うーん、やっぱ浴衣着てキャリーバック引っ張ってた3人組かなぁ」
「あー、そうだよね。今まで足止めて話せたことないもんね。」
「あれをもっと粘ればよかったのかも。」
アラシはしみじみと言った。
「俺ちょっと思ったんだけど、『これからどこ行くんですか?何するんですか?』ってNGワードじゃないかなぁ?」
「ん?なんで?」
「だってさぁ、花火は見たし、基本的には帰ろうと思ってるんだもん。『帰ります』ってなっちゃうよ」
「それを、帰らないように、帰らせないように誘導していかなきゃいけないと思うんだ。」
「だから、『どこ行くんですか?』なんて聞かないで、『飲みに行きませんか?』とか、『あそこにある白木屋行きましょう』とか言ったほうがいいと思うんですよ。」
「なるほどね。それは有るかも。」
いつも結果にはつながらない。
だが、少しずつでも進歩はしていると思う。
昨日より今日、今日より明日。
日々の積み重ねの先に成長がある。
今回の経験を糧に、また次回挑戦しようと俺たちは家に帰った。
成功を夢見て…。
月日は流れ、俺とアラシは相変わらずヘタなナンパを続けている。
そしてカミヤはあの日以来見ていない。