第9回、北千住-1
残暑の残る秋の頃。
俺とアラシは、北千住駅にやってきた。
時間は夜の8時。相も変わらず、人は多い。
アンケートお願いします、と言って声をかけまくっている人達は、その日も精力的に活動していた。
駅前の広場では、駆け出しの路上パフォーマーが人を集め、少し離れた所で見守っている先輩らしき人をみた。
先輩が大きく頷くのを確認すると、手品を披露しはじめた。
俺達はその手品を見ながら、駅から吐き出されて来る人を物色していた。
タイプの女性は何人も通りはしたが声はかけていない。
軽く地蔵だ。
「なぁ、俺達何回もナンパして、一回も成功してないんだけど、ダメなんじゃない?」
アラシは声かける前から弱気な発言をした。
「野村監督っているじゃないですか、その人の本に『もうダメだじゃなく、まだダメだと考えるべき』ってのが有るんですよ、だから俺たちは、まだダメなんです!!」
そう言ってアラシを、叱咤激励した。
かく言う俺も、前回の花火大会から時間がたっていたもんだから、行きづらい感は否めない。
「私は、これだけで生活しています…。皆様からの好意で成り立っています。」
路上パフォーマーは誰もが口にする決まり文句を言い、おひねりをねだっている。