第10回、職務質問ー5
「今何やってたの?お酒呑んでた?」
40代の警察官は親しげを装い俺達に聞いてきた。
「いや酒は飲んでないんだけどちょっと遊んでた 」
「何して?」
その質問に正直に答えるのは、あまりに恥ずかしすぎた。
いい歳こいたオッサンが2人、わざわざナンパするためにここまで来た、なんて言えない。
もちろん俺は沈黙したままだ。
「・・・」
アラシも同じことを考えていたのかどうかは、解らないが、口を開かなかった。
「これから酒でも飲みにいくの?」
親しみやすさをアピールしているのだろうか、40代の警官はやたらと笑顔で話しかけてくる。
「いや、うん、まぁ
ていうか何で、追っかけてきたの?」
単純に思いついた質問をした。
「なんかねぇ、お兄さん達こっちを意識してたからさ」
「ほら、不振な動きしてたからだよ」
アラシに言った。
「いや、こっちのおにいさんじゃなくて、お兄さんの方」
そう言って40代の警官は俺を指す。
「俺かよ、意識なんてしてねぇよ!」
少し語気を強めて言った。
確かに職質されると面倒だとは思っていた。それゆえに警察官たちを見ないようにしていた。それが警察官にとって意識していたと、認識されたようだ。
「お兄さん、お酒飲んでないの?」
「飲んでないって。」
「目赤いけど、何かやってたわけじゃないよね?」
「何かって何だよ!」
「まぁ、そういうわけだからさ、ちょっと協力してもらってもいいですか?」
「はぁ?なにを?」
何がそういう訳なのかさっぱり解らず、何に協力すればいいのか見当もつかなかった。
ただただ、警察官に対する不信感が募る思いだった
「名前教えてもらえる?」
40代の警官は、こちらの意志に関係なく話しを進めようと質問してきた。