30代中年おじさんのナンパのススメ

ナンパして、人生をバラ色に変えちゃおう

第10回、職務質問ー8

俺は終電を逃してもバイクで帰れるが、アラシを乗せて帰るのは不可能だ。

終電を逃したらアラシは帰れない。

「ねぇお兄さん、名前を教えるか、カバンの中を見せるか、どっちかお願いしますよ」

口調は丁寧だが、目は威圧的だ。


「わかった、アラシを家まで送ってやってくれ。そしたら、名前も言うし、カバンの中も見せる。」


「送ったら、カバンの中見せるの?」
不思議そうに聞き返す。


「あぁ、そのかわりちゃんと送れよ」

と俺が言うと、40代の警官は鋭い目つきで、答えた。

「うん、わかった。結論から言うと送ることはできない。名前も言わなくていいし、カバンの中も見せなくていい。もう行っていいよ」

突然のことで俺は呆気にとられた。

別の警官が、まだ食い下がろうとしたのを制して、8人は交番に戻っていった。


アラシは急いで終電に乗った。


なぜあれほどしつこかった警官が、何も確認せず解放したのか。

つまり、こう言うことだと思う。

俺は散々ごねて拒否していたのに、駆け引きを持ちかけて荷物を見せると言った。
そう言えるのは、カバンの中にやましい物が無いからに他ならない。

確認するまでもなく「シロ」だと判断したのだろう。



「あのお巡り、やるなぁ」

そう思いながら、俺は一人バイクで帰った。