第14回、北千住1人
以前にも、1人でこの街に来たことがある。
地蔵になってなかなか声もかけられず、惨敗した街だ。
あれから多少なり場数を踏み、成長した。
以前の俺とは違う!
今日こそは結果を残すぞと意気込んでやってきた。
平日の夜にもかかわらず、相変わらずこの街は賑わいを見せている。
以前来たときと同様に、広場の端の手すりに腰をかけるように寄りかかり、駅から吐き出される人波を眺め、好みの女性が出てくるのを待っていた。
やはりしばらくは、あの子に声かけようかな、どうしようかな。
なんて葛藤を繰り返し、なかなか声をかけられずにいた。
このままじゃ来た意味ないじゃん。
「こんばんは、あの…」
何とか気持ちに踏ん切りをつけて話しかけた。
話しかけると同時に返事も無くおもむろに手に持っていたスマホで電話をはじめたのだ。
苦笑いしながら俺はその場を後にした。
1人でやっているとまわりの視線が気になる。
相方がいるときは、
「あはは、ダメだった (笑)」
なんて誤魔化したり、お互いを励ましあったりしてやれるが、1人は一度落ちたらなかなか気持ちを高めることが出来ない。
躊躇してなかなか話しかけることができない。
地蔵気味だ。
赤いワンピースの女。
「こんばんは、大丈夫ですか?」
女はこちらを見るでもなく、頷いて足早に去って行った。
あれから成長したはずだが、まだ1人ではしんどい。
いつかは一人でも、いつでも、どこでもやれるようになろう。
そう心に決めこの街を後にした。