第19回、疑惑ー3
「あれ?
アラシさん、あれリュウジの奥さんじゃない?」
俺は驚きと同時に慌てて奥さんを指差し、アラシに確認を求めた。
「ん?あれ?うーん?
解んないなぁ。
おれリュウジの奥さんって、あんまりハッキリ見たこと無いんだよね」
アラシは俺の指差す方向に
目をやり、おちついて答えた。
「いや、俺も確証は無いんだけど…。」
世の中には似てる人ってのは居るもんだ。俺も何度か会ったことはあるがハッキリ顔を覚えていない。
気のせいかも知れない?
そう思った。
一瞬奥さんらしき人がこちらを見た気がした。
次の瞬間、奥さんらしき人は今まで顔を上げて歩いていたのに、急にうつむき、手で顔を隠すように前髪を直しながら歩いた。
「えっ!?」
その不自然な仕草に俺の疑惑は確信へと変わった。
「歩きながら、急に前髪直す?これ絶対本人でしょ?
ちょっとつけてみましょう。」
「おう、面白くなってきたな」
アラシは二つ返事で了承した。
2人が行った方向に俺たちも進んだ。
ばれないように尾行しようと思っていたのだが、奥さんは西口出口すぐ横の喫煙所で優雅にタバコを吸っていた。
男は、というと奥さんとは少し離れた所。
花壇の縁石に腰を下ろしスマホをいじっている。