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「男が居ない。」
俺は呟いた。
「後で合流するつもりだな。」
アラシが言う
奥さんは左に進み、階段を降りた。右手にスマホを持ち耳にあて、誰かと電話しているようだ。
俺たちのは、慎重に、バレないように距離をとり、見失わないように後をつけた。
階段を降りるとキャバクラの呼び込みが声をかけてきた。
それを無視し、奥さんの背中を追った。
「アラシさん、尾行する時って、相手の後頭部を見ちゃダメなんですよ。相手の足元を見るんですって。」
俺はどこかで聞きかじった話しをした。
「なんで?」
「後頭部だと、相手が急に振り返ったときに目があうんですよ。 でも、足元だと視線が逸れてて、バレにくいんですって。」
でもそれは顔バレしてない人が尾行する場合であって、今回のような状況には当てはまらないということにその時は気づいてなかった。
「へぇ~、初めて知ったよ。」
アラシは納得し、さっそく試すようだ。