第6回、独りぼっち-5
「大丈夫ですか?」
「…」
返事がない。彼女は目をつぶっていて、俺に気づいていないようだ。
意を決してもう一度聞いてみた。
「あのー、大丈夫ですか?」
「…。」
相変わらず、目をつぶっている。さっきより大きな声で話しかけたので、聞こえていないはずはない。
しかし、女性は全く微動だにせず、その場に立ち止まったまま目をつぶっている。
俺は、少し離れて観察してみた。
すると、彼女は何かを拾う素振りをして、今度はしっかりした足取りで今歩いて来た道を戻った。
そしてまた立ち止まり、何かを拾い上げるそぶりをして歩いて行った。
あれは一体何だったのだろうか。
何か宗教的な儀式だったのかもしれない。