第21回、レイプ魔と俺-5
「あーはいはい、いたいた。」
「あいつもあの女狙ってるのかな?」
「えー、そんなことある?」
「だって、女の歩く速度すげぇ遅いのに一定の距離とって歩いてますよ」
「そうだな、俺らは女尾行してるからわざと遅くしてるし…」
「あ、曲がった」
作業着の男は右に曲がった
女はまっすぐ歩いている。
「あれ?気のせいだったのかなぁ?」
「そうじゃないの?もう曲がったんだから」
「えー、でもなぁ…。何か不振な挙動なんだけどなぁ」
俺は不本意ながらアラシの言うことに納得した。
駅から離れ人もまばらである。右手の女子大を、横目に、そのまま真っ直ぐ進む。
街灯も少なくなりどんどん暗がりが広がるなか女はゆっくり、ヨタヨタと歩みを進めていく。
俺達は一定の距離を保ちながら尾行を続けた。
俺達と女の間には誰も居ない。女がふりかえったら、警戒されること間違いなし。
女が丁字路を超えると 丁字路のカドから男が一人現れた。
「あれ?あいつさっきの作業着じゃないですか?」
「え? あっ、そうだそうだ、あいつだ!」
アラシは興奮したように言った。
「あいつ、やっぱりあの女狙いですね」
「あぁ、間違いないね」
坂道に差しかかり、女は更に暗がりの中へ。
第21回、レイプ魔と俺-4
しばらくすると、女は立ち上がり歩き始めた。
東口の出口を出て階段を下りる。
電話はしたままだ。
スカウトマンらしき若者が電話中の女に何やら話しかけている。
しばらく話した後スカウトマンは駅に戻っていった。
「ハヤオ、どうする?」
アラシが聞いてきた
「電話終わったら話しかけましょう」
俺たちは後を追うことにした。
「あれ?あの作業着の男、大分前に駅で見かけましたよ」
俺は目の前を歩く作業着の若者を指差した。
第21回、レイプ魔と俺-3
行き交う人、特に男は彼女のパンツが見えることに気付き、通り過ぎる時に、チラッと見ていく。
ハタから見てると、パンツを見ようとしてるのがバレバレだ。
自分も他人にあんな風に見られてるんだな、
と思った時に恥ずかしさを覚えた。
40代のサラリーマン風の男が女をチラッと見て通り過ぎる。
そのすぐ後にスマホを耳にあてながら戻ってきた。
女の向かいに立ち、スマホのカメラが彼女を捉える角度で盗撮しようとしている。
通話するふりをして盗撮しているのはすぐに解った。
サラリーマンのスマホのライトがまぶしく光っている。
うっかりスマホのカメラのフラッシュ機能をつけたまま耳にあてているからだ。
盗撮するならライトを消さなきゃバレバレである。
妙な正義感から、俺はサラリーマンのカメラを遮るように立ち、無言で、サラリーマンを見た。
すると、そそくさと歩いていった。
女は気付いた様子は無く楽しげに電話を続けている。
第21回、レイプ魔と俺-2
「アラシさん、あれ酔ってますよ。」
「あぁ、ポイね」
俺たちは顔を見るために彼女の目の前を通り過ぎることにした。
「かわいいね。」
アラシは嬉しそうに言った。
「そうですね、あとパンツ丸見えですね」
「ハヤオも気づいた?」
「もちろん。でもガン見すると、気付いて足閉じちゃうからチラッとしか見れなかですよ」
「電話終わったら声かけようか。」
「そうですね。近くで待っておきましょうか」
俺は彼女の2mほど隣、
アラシは彼女の斜め向かい側。バラバラにスタンバイした。
第21回、レイプ魔と俺-1
ゴールデンウィークも終わり、いつもの仕事に追われる中、最初の週末がやってきた。
俺たちは、ホームタウンとも言うべき松戸駅前にいる。
前回ここに来たときには、友達の奥さんらしき人物が男と歩いていた。
あの日以来だ。
そして相方はいつものアラシ。
花見の時は人が多すぎて…と言うのは言い訳に過ぎないが、情けない結果に終わった。
もっともっと、ガンガン声をかけなければいけない。
時間は夜8時をまわったところ。
いつも通り駅の東口、西口を一通り見て回った。
まだ声はかけていない。
東口の出口近くにしゃがんで電話をしてるビジネススーツの女の子がいた。
大学生の就活。もしくは、新入社員であろう。
軽く酔っているらしく、気だるそうに電話をしている。
第20回、花見ー5
こんばんは、さくら綺麗ですね」
「え、えぇ、そうですね」
黒い帽子の方は驚いたようすで答えた。
「どこ行くんですか?」
「あそこのスタバに…」
「じゃあ、俺たちも一緒に行っていい?」
俺はヘラヘラ笑いながら聞いた。
「いや、友達が来るんで」
「あ、そう~。じゃあね~」
「ダメでしたね」
俺はアラシに話しかけて、失敗した恥ずかしさを誤魔化した。
「人が多くて声かけづらいな」
アラシは言った
俺たちはそのまま帰ることにした。
第20回、花見ー4
また奥まで歩く。
2人とも声はかけていない。
「イェーイ!!」
大学生風の2人組のチャラ男が若い女の子にビール片手に話しかけていた。
ナンパだ。
「あれってアリなの?」
アラシが俺に聞く。
「まぁ、何もしないよりはいいんじゃないですかねぇ」
俺たちは、今日まだ1度も声をかけていない。
「まぁな、ナンパに正解はないからな。俺たちもやらなきゃな。」
また1番端っこまでたどり着いた。
これでは駄目だ
「アラシさん、あれいきましょう」
俺は、ツバの広めの黒いハットをかぶった女と、白っぽい服装の2人組を指差した。
「いいよ、いこう。」
俺はそっと斜め後ろから近づき、声をかけた。