第22回、足立花火大会2016ー1
去年に引き続き、足立区の花火大会にやってきた。
相方はお馴染みのアラシ。
メインとなる会場は荒川河川敷である。
あの広い河川敷に人がびっしりと集まっている。
俺たちは花火がよく見えるような場所を求め、ブルーシートやレジャーシートのすき間を縫って歩いた。
2人が座るくらいのスペースならまだまだありそうだ。
「この辺でいいですかねぇ?」
アラシに聞く
「いいんじゃない。座ろうか。」
前日に雨が降ったので、地面はまだ少し湿り気を帯びていた。
俺たちは駅前でもらったウチワをケツの下に敷き座った。
「それにしても俺らってホント2度オイシいと言うか、一石二鳥と言うか…よく考えるよな。普通に花火を楽しんでから、その客目当てでナンパするんだからな」
楽しそうにアラシが言う。
「そうですね。それで結果が出せれば言うこと無し。まぁ失敗しても、花火見に来たと思えばいいですからね」
「そうだな、損はないな」
第21回、レイプ魔と俺-8
俺達はそのまま尾行を続けた。
坂を上がりきって信号を渡るとコンビニがある。
コンビニを通り過ぎたところで女の通話が終わったようだ。
俺はすかさずアラシから離れ声をかけた。
「こんばんは、大丈夫ですか?」
「あ、は~い。大丈夫で~す。」
女はゆったりと返事をしてUターンをした。
「どこ行くの?」
「コンビニ~。彼氏くるから~。」
そう言って女はコンビニの駐車場に入っていった。
俺はそのままアラシの元に戻る。
「駅まで遠いな」
アラシはつぶやいて、坂道を下っていった。
第21回、レイプ魔と俺-7
俺達もすぐに動けるように距離を縮めた。
しかし、男は無理やりどうこうする様子はなく、しばらくしたら女から離れていった。
男はレイプ魔ではなかった。
俺達と同じで、ナンパしてただけのようだ。
俺達と違うのは電話が終わるまで待てずに話しかけたところだ。
「何も起こりませんでしたね…。なんだつまんねーの。とっ捕まえて警察から表彰されたかったのになぁ」
俺はホッとした反面少し残念な気もした。
「アハハ。杞憂だったな。まぁ、何事も無く良かったってとこだな」
そう言ってアラシは俺の肩をポンと叩いた。
第21回、レイプ魔と俺-6
「もしかしたらあいつ、この暗がりに乗じて女を隅っこに引っぱり込んで無理やりやろうとしてるんじゃないですか?」
俺は少し心配になった。
「えー、まさか。
でも、どうかわからないな」
「もし、そうなったら助けましょう。」
そう言って俺は気を引き締め、グッと拳を握った。
「わかった。やれるだけやってみるよ」
アラシは真剣な表情でこたえた。
作業着の男が女との距離を縮めていった。
まさか…。
俺達に緊張が走った。
作業着の男は、追い抜きざまに女がよろけてぶつかりそうになったのをきっかけに声をかけた。
「声かけましたね」
「やばいな、いよいよだな」
女はまだ通話中だ。
相変わらずヨタヨタと歩いている。
作業着の男はその傍らで寄り添うように歩きながら、ときどき女の方に顔を向け、ふらついた時に肩や腰を支えるしぐさを見せる。
いつ何が起こってもおかしくはない状況だ。
第21回、レイプ魔と俺-5
「あーはいはい、いたいた。」
「あいつもあの女狙ってるのかな?」
「えー、そんなことある?」
「だって、女の歩く速度すげぇ遅いのに一定の距離とって歩いてますよ」
「そうだな、俺らは女尾行してるからわざと遅くしてるし…」
「あ、曲がった」
作業着の男は右に曲がった
女はまっすぐ歩いている。
「あれ?気のせいだったのかなぁ?」
「そうじゃないの?もう曲がったんだから」
「えー、でもなぁ…。何か不振な挙動なんだけどなぁ」
俺は不本意ながらアラシの言うことに納得した。
駅から離れ人もまばらである。右手の女子大を、横目に、そのまま真っ直ぐ進む。
街灯も少なくなりどんどん暗がりが広がるなか女はゆっくり、ヨタヨタと歩みを進めていく。
俺達は一定の距離を保ちながら尾行を続けた。
俺達と女の間には誰も居ない。女がふりかえったら、警戒されること間違いなし。
女が丁字路を超えると 丁字路のカドから男が一人現れた。
「あれ?あいつさっきの作業着じゃないですか?」
「え? あっ、そうだそうだ、あいつだ!」
アラシは興奮したように言った。
「あいつ、やっぱりあの女狙いですね」
「あぁ、間違いないね」
坂道に差しかかり、女は更に暗がりの中へ。
第21回、レイプ魔と俺-4
しばらくすると、女は立ち上がり歩き始めた。
東口の出口を出て階段を下りる。
電話はしたままだ。
スカウトマンらしき若者が電話中の女に何やら話しかけている。
しばらく話した後スカウトマンは駅に戻っていった。
「ハヤオ、どうする?」
アラシが聞いてきた
「電話終わったら話しかけましょう」
俺たちは後を追うことにした。
「あれ?あの作業着の男、大分前に駅で見かけましたよ」
俺は目の前を歩く作業着の若者を指差した。