第8回、君がいた夏-6
俺たちは、浴衣を着てキャリーバッグを引いた3人組とすれ違った。
「こんばんわ、花火見ました?」
カミヤが声をかける。
俺とアラシも続く。
「これからどこか行くんですか?」
女の子達は、足を止めて、俺たちの話しを聞いていた
「もう帰ります」
女の子の1人が答えた。
「そうですか、これからどこか行きませんか?」
「いいえ、帰ります」
「そうですか、わかりました。じゃぁ気をつけて」
そう言って別れた。
しばらくして、俺は思った。
「今の、もうちょっと粘ればよかったんじゃね?」
「俺たち、いつも声かけてもシカトされたり、単語で返されてばっかだったじゃん。それに今みたいに話ししたことなかったし、女の子が足を止めることってなかったんだから、今の粘るべきだったんだよ」
俺は熱く語った。ただ粘っても結果は一緒だったかもしれないが、十分に粘る価値はあった。
「あー、確かにそうかもしれないね。ゴールをどこに設定するかだよな。俺たちいつの間にかゴールが会話をするってなってたのかもしれない。それで満足しちゃってチャンスを逃したってことか。」
アラシは納得した様子で答えた。
この教訓を次に活かそうってことで、またターゲットを探し、歩いた。